CANとイーサネットの違いを解説
自動車の電子制御システムにおいて、 CANとイーサネットは重要な通信規格です。両者には異なる特徴や用途があり、車載ネットワークの進化とともにその役割も変化しています。
CANとは
CAN(Controller Area Network)は、1986年にボッシュ社が開発した車載用通信プロトコルです。CANの主な特徴は以下の通りです:
- 省配線のバス型ネットワーク: 少ない通信線で多数のECU(Electronic Control Unit)を接続できます。
- ノイズ耐性: 2線式差動信号を採用し、車両走行中のノイズに強い設計となっています。
- 低コスト: シンプルな構造により、製造コストを抑えられます。
- 優先順位制御: CSMA/NBA方式を採用し、重要なメッセージを優先的に送信できます。
CANの通信速度は最大1Mbpsで、データ長は8バイトが標準です。2012年に登場したCAN FDでは、最大5Mbpsの通信速度と64バイトのデータ長が可能になりました。
イーサネットとは
イーサネットは、元々オフィスや家庭用のネットワーク規格として開発されましたが、近年では車載用にも採用されています。車載イーサネットの特徴は以下の通りです:
- 高速通信: 現在の車載イーサネット規格では最大10Gbpsの通信速度を実現しています。
- 大容量データ転送: 高解像度カメラやセンサーからの大量データを扱えます。
- 標準化: IEEE802.3規格に準拠し、互換性が高いです。
- 拡張性: 将来的に25Gbps、50Gbps、100Gbpsへの対応も検討されています。
CANとイーサネットの違い
CANとイーサネットには、以下のような主要な違いがあります:
1. 通信速度と帯域幅
- CAN: 最大1Mbps(CAN FDで5Mbps)
- イーサネット: 100Mbps~10Gbps(さらに高速化の可能性あり)
2. データ長
- CAN: 8バイト(CAN FDで最大64バイト)
- イーサネット: 最大1500バイト(ジャンボフレームでさらに大きい)
3. ネットワーク構造
- CAN: バス型(ライン型)
- イーサネット: スター型、ツリー型など柔軟な構成が可能
4. 用途
- CAN: 制御系の通信、リアルタイム性が要求される用途
- イーサネット: 大容量データ転送、ADAS(先進運転支援システム)など
5. コスト
- CAN: 比較的低コスト
- イーサネット: 高速化に伴い、より高価な測定器や評価機器が必要
6. 普及状況
- CAN: 長年使用されており、広く普及している
- イーサネット: 次世代車載ネットワークとして採用が進んでいる
7. 規格の進化
- CAN: CAN FD、CAN XLなど、既存システムとの互換性を保ちつつ進化
- イーサネット: 急速に高速化が進み、新しい規格が次々と登場
まとめ
CANとイーサネットは、それぞれ車載ネットワークにおいて重要な役割を果たしています。CANは省配線、低コスト、ノイズ耐性に優れ、制御系の通信に適しています。一方、イーサネットは高速・大容量のデータ転送が可能で、次世代の車載システムに不可欠な技術となっています。
現代の自動車では、これらの技術が共存しており、用途に応じて使い分けられています。CANは依然として重要な通信技術として使用されていますが、コネクテッドカーやADASの発展に伴い、イーサネットの重要性が増しています。
今後も車載ネットワークは進化を続け、CANとイーサネットの両技術がそれぞれの特性を活かしながら、より高度な自動車システムを支えていくことが予想されます。