UPSと瞬低補償装置の違いを解説
電源トラブル対策として、UPSと瞬低補償装置は重要な役割を果たしています。 両者は似たような機能を持ちますが、その目的や特性には明確な違いがあります。 本記事ではUPSと瞬低補償装置の特徴や違いについて詳しく解説します。
UPSとは
UPS(Uninterruptible Power Supply)は無停電電源装置とも呼ばれ、主に停電時に電力を供給する装置です。UPSは常時インバータ方式や常時商用方式など、いくつかの方式がありますが、基本的にはバッテリーを内蔵し、停電時にそのバッテリーから電力を供給します。
UPSの主な特徴は以下の通りです:
- 停電時に無瞬断で電力を供給
- 長時間の電力バックアップが可能(機種により異なる)
- 電圧低下、サージ、ノイズなど、さまざまな電源トラブルに対応
- バッテリーの定期的な交換が必要
UPSは、データセンターや病院など、絶対に電源を落とせない重要な設備に広く使用されています。
瞬低補償装置とは
瞬低補償装置は、瞬時電圧低下(瞬低)に特化した対策装置です。瞬低とは、電力系統の故障などにより、短時間(通常0.2秒以下)電圧が低下する現象を指します。
瞬低補償装置の主な特徴は以下の通りです:
- 瞬低発生時に無瞬断で電力を供給
- 比較的短時間(0.3秒〜15秒程度)の電力バックアップ
- UPSに比べて小型・軽量
- 停電よりも発生頻度の高い瞬低に特化した設計
瞬低は年間3〜20回程度発生する比較的頻繁な電源トラブルであり、製造ラインの停止など、産業界に大きな影響を与える可能性があります。
UPSと瞬低補償装置の違い
UPSと瞬低補償装置には、以下のような違いがあります:
- 目的
- UPS:主に停電対策
- 瞬低補償装置:瞬低対策に特化
- バックアップ時間
- UPS:長時間(数分〜数時間)
- 瞬低補償装置:短時間(0.3秒〜15秒程度)
- サイズと重量
- UPS:比較的大型で重い
- 瞬低補償装置:UPSより小型・軽量
- 対応する電源トラブル
- UPS:停電、電圧低下、サージ、ノイズ、周波数変動など幅広く対応
- 瞬低補償装置:主に瞬低と短時間の瞬停に対応
- エネルギー蓄積方式
- UPS:主にバッテリー(二次電池)を使用
- 瞬低補償装置:キャパシタやフライホイールなど、バッテリーレス方式も多い
- メンテナンス
- UPS:バッテリーの定期交換が必要
- 瞬低補償装置:バッテリーレス方式の場合、交換頻度が少ない
- コスト
- UPS:初期費用、維持費用ともに比較的高い
- 瞬低補償装置:UPSより初期費用、維持費用ともに抑えられる場合が多い
- 設置環境
- UPS:バッテリーを使用するため、温度管理が重要
- 瞬低補償装置:バッテリーレス方式の場合、温度管理の制約が少ない
- 運用方式
- UPS:常時インバータ方式や常時商用方式など、複数の方式がある
- 瞬低補償装置:主に常時商用給電方式を採用
まとめ
UPSと瞬低補償装置は、どちらも電源トラブル対策として重要な役割を果たしますが、その特性や用途には明確な違いがあります。UPSは幅広い電源トラブルに対応し、長時間のバックアップが可能ですが、サイズが大きく、メンテナンスも必要です。一方、瞬低補償装置は瞬低という特定の問題に特化し、小型軽量で維持管理も比較的容易です。
電源トラブル対策を検討する際は、保護したい機器の重要度、想定される電源トラブルの種類と頻度、設置環境、コストなどを総合的に考慮し、UPSと瞬低補償装置のどちらが適しているか、あるいは両方を組み合わせるべきかを判断することが重要です。適切な電源保護装置を選択することで、機器の安定稼働と業務の継続性を確保することができます。