IPSとWAFの違い:ネットワークセキュリティを強化
IPSとWAFはどちらもネットワークセキュリティを強化するための重要なツールですが、 その機能と防御対象に違いがあります。 本記事では、IPSとWAFの特徴と違いについて詳しく解説します。
IPSとWAFは、サイバー攻撃からシステムを守るために使用される重要なセキュリティ対策ツールです。両者はシグネチャをもとに通信を検査し、通信の許可/拒否を判断するという基本機能は同じですが、防御対象が異なります。
IPSとは
IPS(Intrusion Prevention System)は、侵入防止システムと呼ばれ、外部からの不正アクセスからサーバーやネットワークを保護するセキュリティ対策です。IPSの主な特徴は以下の通りです:
- ネットワークを戦略的なポイントごとに監視し、悪意のあるアクティビティをスキャンします。
- 構成に従って悪意のあるトラフィックを報告、ブロック、もしくは遮断します。
- 通常、WAFの前、ネットワーク内のファイアウォールの後ろに展開されます。
- OSIレイヤ4-7で動作し、ほとんどのネットワークプロトコル内の脅威をスキャンします。
- プラットフォームレイヤー(OSやミドルウェアを含む)が主な防御対象です。
WAFとは
WAF(Web Application Firewall)は、Webアプリケーションファイアウォールと呼ばれ、Webアプリケーションの脆弱性を悪用する攻撃を検出・防御し、ウェブサイトを保護するためのセキュリティ対策です。WAFの主な特徴は以下の通りです:
- Webアプリケーションのトラフィック(HTTP/S)に焦点を当て、ネットワーク上でインターネットに接続する部分にあるアプリケーションを防御します。
- 振る舞いアルゴリズム(機械学習やポジティブセキュリティモデル)、またはネガティブセキュリティモデルなど多くの技術を用いて、アプリケーションへのトラフィックを許可すべきか、あるいはブロックすべきかを判断します。
- OSIレイヤ7で動作し、アプリケーションに対する脅威をスキャンします。
- SQLインジェクション、OSコマンドインジェクション、クロスサイトスクリプティングなどの攻撃を防ぐことができます。
IPSとWAFの違い
IPSとWAFの主な違いは以下の通りです:
- 防御対象:
- IPS:OSやミドルウェアを含むプラットフォームレイヤーが防御対象です。
- WAF:プラットフォーム上で動作する固有のWebアプリケーションが防御対象です。
- スキャン範囲:
- IPS:OSIレイヤ4-7のパケットをスキャンします。
- WAF:OSIレイヤ7のセッションをスキャンします。
- プロトコル:
- IPS:ほとんどのネットワークプロトコルに対応します。
- WAF:主にHTTP/HTTPSプロトコルに特化しています。
- 暗号化/復号化:
- IPS:SSL/TLSに対応していません。
- WAF:SSL/TLSに対応しています。
- 実装方法:
- IPS:主にインラインで実装されます。
- WAF:インラインまたはアウトオブパスで実装可能です。
- カバー範囲:
- IPS:OSやミドルウェアに対する攻撃を得意としていますが、Webアプリケーション層の攻撃に対してはカバー範囲が狭くなります。
- WAF:Webアプリケーション層の攻撃に対する防御を得意とし、ミドルウェア・OSと向かうにつれてカバー範囲が狭くなります。
ただし、WAFとIPSのカバー範囲には重なる部分もあります。例えば、WAFでもApache、IISといったWebサーバーの脆弱性を悪用する攻撃やApache Strtusなどのフレームワーク、シェル(Bash)の脆弱性を悪用する攻撃が防御対象となることがあります。
まとめ
IPSとWAFは、どちらもネットワークセキュリティを強化するための重要なツールですが、その機能と防御対象に違いがあります。IPSはより広範囲のネットワークプロトコルとプラットフォームレイヤーを保護し、WAFはWebアプリケーション特有の脅威に特化しています。
多くの場合、IPSとWAFは補完的に使用されます。IPSの実装はすべてのパケットを検査することで、ネットワークレベルでスキャンと防御を行う一方、WAFの実装はWebアプリケーションのトラフィックを防御します。
効果的なセキュリティ戦略を立てるためには、システムの特性や想定される脅威を考慮し、IPSとWAFを適切に組み合わせて使用することが重要です。これにより、ネットワークからアプリケーションレベルまで、包括的なセキュリティ対策を実現することができます。