BPMNと業務フローの違い::ビジネスプロセス管理

BPMNと業務フローはどちらもビジネスプロセスを可視化するためのツールですが、その目的や詳細度、標準化の程度に大きな違いがあります。BPMNはより詳細で標準化された方法で業務プロセスを表現し、業務フローは一般的な概要を示すために使用されます。

BPMNとは

BPMN(Business Process Model and Notation)は、業務プロセスモデリング表記法と呼ばれ、業務の開始から終了までのステップと手順を詳細にフロー形式で図式化する方法です。BPMNの主な特徴は以下の通りです:

  1. 国際的に標準化された記号と表記法を使用
  2. 業務プロセスを詳細に描写し、実行可能なレベルまで落とし込む
  3. システムと人間の作業を明確に区別して表現
  4. 複雑な条件分岐や並行処理を表現可能
  5. 業務の標準化と継続的な改善を目的としている

業務フローとは

業務フローは、一般的な業務の流れを概略的に示すための図表です。主に以下の目的で使用されます:

  1. システム開発の現状分析
  2. おおよその業務の流れの把握
  3. システムが関係する箇所の特定
  4. 業務マニュアルやISO文書の補足資料

業務フローは通常、BPMNほど詳細ではなく、システムと人間の作業の区別も明確ではありません。

BPMNと業務フローの違い

  1. 目的の違い
    • BPMN:読んだ人がそのまま実務を行えるように詳細に記述する
    • 業務フロー:おおよその業務の流れを把握し、システムが関係する箇所を特定する
  2. 詳細度の違い
    • BPMN:システムが担わない人の作業も含めて詳細に描く
    • 業務フロー:主にシステムが使われる前後の業務を中心に描く
  3. 標準化の程度
    • BPMN:国際的に標準化された記号と表記法を使用し、解釈の余地を少なくする
    • 業務フロー:表記法が統一されておらず、解釈に幅がある場合がある
  4. 改善と維持管理
    • BPMN:継続的な業務改善と標準化を目的としており、BPMSと組み合わせて使用される
    • 業務フロー:多くの場合、一度作成されると更新されずに放置されることが多い
  5. システムとの関係
    • BPMN:BPMSというシステムと連携し、人の業務を含めたプロセス管理を行う
    • 業務フロー:主にシステム開発の現状分析や、システムが使われる箇所の特定に使用される
  6. 適用範囲
    • BPMN:業務の流れや手順が決まっていて繰り返し発生する業務、条件分岐のある業務、複数のメンバーやチームが関わる業務、複数の作業が同時並行で進行する業務に適している
    • 業務フロー:比較的シンプルな業務や、概要を把握するための用途に適している

まとめ

BPMNと業務フローは、どちらもビジネスプロセスを可視化するツールですが、その目的や詳細度、標準化の程度に大きな違いがあります。BPMNは業務の標準化と継続的な改善を目指し、詳細かつ明確な表現を可能にする一方、業務フローは一般的な業務の流れを概略的に示すために使用されます。

組織の目的や業務の複雑さに応じて、適切なツールを選択することが重要です。BPMNは複雑で繰り返し発生する業務や、多くの関係者が関わるプロセスに適しています。一方、業務フローは比較的シンプルな業務や、システム開発の初期段階での現状分析に適しています。

最終的に、BPMNは業務の標準化と継続的な改善を促進し、業務効率の向上につながる可能性が高いツールであると言えます。しかし、その導入には時間と労力が必要であり、組織の状況や目的に応じて適切に選択することが重要です。

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