オペレジとBCPの違い:業務継続性確保
オペレーショナル・レジリエンス(オペレジ)とビジネス継続計画(BCP)は、企業の業務継続性を確保するための重要な概念ですが、その焦点と対応方法に違いがあります。両者の特徴と違いを理解することで、より効果的なリスク管理と業務継続が可能になります。
オペレジとは
オペレーショナル・レジリエンス(オペレジ)は、システム障害、サイバー攻撃、自然災害などの想定外のトラブルが発生しても、金融機関が重要な業務を最低限維持すべき水準で提供し続けられる能力を指します。オペレジの特徴は以下の通りです:
- 未然防止策を尽くしても業務中断は必ず起こることを前提としています。
- トラブル発生時に利用者目線に立った対応策を用意することが重要です。
- 重要な業務の特定と、それらの業務を維持するために必要な経営資源の確保が求められます。
オペレジは、金融機関を取り巻く業務環境やビジネスモデルの変化に対応するため、国際的に注目されています。日本でも金融庁が2022年12月に「オペレーショナル・レジリエンス確保に向けた基本的な考え方(案)」を公表し、その重要性が認識されています。
BCPとは
ビジネス継続計画(BCP)は、主に自然災害などの特定のリスク事象を想定した対応計画です。BCPの特徴は以下の通りです:
- 緊急時における重要業務の継続や早期復旧を目的としています。
- 特定の災害や事故を想定し、それに対する具体的な対応策を事前に準備します。
- 主に自然災害や大規模事故など、予測可能な事象に焦点を当てています。
BCPは、企業が災害や事故発生時に事業を継続または早期に復旧するための計画であり、多くの企業で導入されています。
オペレジとBCPの違い
オペレジとBCPには以下のような違いがあります:
- 対象とする重要業務の考え方:
- BCP:緊急時における重要業務に焦点を当てます。
- オペレジ:自社の金融サービスが社会や顧客にとってどれだけ重要かを検討します。
- 想定するリスクの範囲:
- BCP:主に自然災害など、特定のリスク事象を想定します。
- オペレジ:システム障害、サイバー攻撃、感染症など、より広範なリスクを考慮します。
- アプローチ方法:
- BCP:特定のリスクに対する具体的な対応策を準備します。
- オペレジ:重要な業務の特定、耐性度の設定、相互関連性のマッピング、必要な経営資源の確保など、より包括的なアプローチを取ります。
- 目的:
- BCP:事業の継続や早期復旧を主な目的とします。
- オペレジ:重要な業務を最低限維持すべき水準で提供し続けることを目指します。
- 視点:
- BCP:主に企業内部の視点から対応策を考えます。
- オペレジ:利用者目線に立った対応策を重視します。
- 適用範囲:
- BCP:主に従来の業務やシステムを対象とします。
- オペレジ:デジタル化の進展に伴う多種多様な金融サービスも検討の対象に含めます。
まとめ
オペレジとBCPは、企業の業務継続性を確保するための重要な概念ですが、その焦点と対応方法に違いがあります。BCPが特定のリスクに対する具体的な対応策を準備するのに対し、オペレジはより広範なリスクを考慮し、重要な業務の特定と維持に焦点を当てています。
オペレジの導入により、金融機関はリスク管理の高度化や業務効率の改善が期待できます。また、オペレジ活動は自社の存在意義を問うことにもつながり、企業文化の浸透や金融サービスの改善にも寄与する可能性があります。
今後、金融機関はBCPとオペレジの両方の概念を適切に組み合わせ、より強固な業務継続体制を構築することが求められます。特に、ITシステムの重要性が増す中、ビジネス部門とIT部門が一体となってレジリエンスに取り組む全社的な推進態勢の実現が期待されます。