WEPとAESの違い:無線LANセキュリティ

WEPとAESはWi-Fi通信におけるセキュリティを確保するための暗号化方式ですが、 その安全性と効果には大きな違いがあります。 WEPは古い規格で脆弱性が指摘されており、 現在ではAESを使用したより安全な暗号化が推奨されています。 以下では、それぞれの特徴と違いについて詳しく解説します。

WEPとは

WEP(Wired Equivalent Privacy)は、Wi-Fi等の無線LAN通信の初期の暗号化方式として開発されました。その名前が示すように、有線LANと同等のプライバシーを無線LANでも実現することを目指していました。

WEPの特徴

  • IEEE802.11規格で規定されている
  • RC4というストリーム暗号アルゴリズムを使用
  • WEP-64とWEP-128の2種類がある
  • 固定の暗号鍵と24ビットの初期化ベクタ(IV)を使用

WEPの問題点

WEPには以下のような重大な脆弱性が存在します:

  1. 暗号鍵が固定で全ユーザーが同じ値を使用
  2. 初期化ベクタ(IV)が24ビットと短く、再利用される可能性が高い
  3. IVが暗号化されずに平文で送信される

これらの問題により、WEPは比較的容易に解読される可能性があり、現在では使用が推奨されていません。

AESとは

AES(Advanced Encryption Standard)は、アメリカ国立標準技術研究所(NIST)が選定した先進的暗号化標準です。WEPの脆弱性が明らかになった後、より安全な暗号化方式として採用されました。

AESの特徴

  • 共通鍵暗号方式の一種
  • 128ビット、192ビット、256ビットの鍵長をサポート
  • ブロック暗号アルゴリズムを使用
  • 複数の変換処理(SubBytes、ShiftRows、MixColumns、AddRoundKey)を繰り返し実行

AESの利点

  1. 高いセキュリティ性能
  2. 処理速度が比較的高速
  3. さまざまな分野で広く使用されている

WEPとAESの違い

WEPとAESには、暗号化アルゴリズム、セキュリティ強度、実装方法など、多くの面で違いがあります。

暗号化アルゴリズム

  • WEP: RC4(ストリーム暗号)を使用
  • AES: ブロック暗号アルゴリズムを使用

ストリーム暗号は処理速度が速いものの、実装が複雑で安全性に課題があります。一方、ブロック暗号は、データをブロック単位で暗号化するため、より高いセキュリティを実現できます。

セキュリティ強度

  • WEP: 脆弱性が多く、比較的容易に解読可能
  • AES: 現時点で最も安全とされる暗号化方式

AESは、複数の変換処理を繰り返し行うことで、高いセキュリティ強度を実現しています。

鍵管理

  • WEP: 固定の暗号鍵を使用
  • AES: 通信ごとに暗号鍵を変更可能

AESでは、通信ごとに暗号鍵が変更されるため、一つの鍵が解読されても次の通信は保護されます。

標準化と採用状況

  • WEP: 古い規格で、現在は使用が推奨されていない
  • AES: 米国政府の標準暗号化方式として採用され、Wi-Fiセキュリティの事実上の標準となっている

実装方式

  • WEP: 802.11認証プログラムの一部として実装
  • AES: WPAやWPA2などのWi-Fi認証プログラムでCCMP(Counter Mode with CBC-MAC Protocol)として実装

処理速度とリソース要求

  • WEP: 比較的軽量で、古い機器でも実装可能
  • AES: より多くの計算リソースを必要とするが、現代の機器では問題なく動作

まとめ

WEPとAESは、どちらもWi-Fi通信のセキュリティを確保するための暗号化方式ですが、その安全性と効果には大きな違いがあります。WEPは初期の暗号化方式として開発されましたが、重大な脆弱性が発見されたため、現在では使用が推奨されていません。

一方、AESは最新の暗号化技術を用いており、高いセキュリティ性能と処理速度を両立しています。複数の変換処理を繰り返し行うことで、データの解読を極めて困難にしています。また、通信ごとに暗号鍵を変更できる点も、セキュリティ向上に大きく寄与しています。

現在のWi-Fi環境では、AESを使用したWPA2やWPA3が標準となっており、安全な無線通信を実現しています。ユーザーは、自身のWi-Fi機器の設定を確認し、可能な限り最新のセキュリティ規格を採用することが推奨されます。

セキュリティ技術は常に進化しており、今後も新たな暗号化方式や認証プログラムが開発される可能性があります。ユーザーは、最新のセキュリティ動向に注意を払い、適切な対策を講じることが重要です。

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